2017年2月の見たもの読んだもの



タクマとハナコ〔2〕  はるな檸檬(文藝春秋/2016年12月)
あのなチカ / 答えはひとつ / ものすごく幸せになるんだ!!(P117)
お衣装づくりおよび舞台化粧、当日のなりきりっぶりと周囲の反応、夢中なものにたいする情熱の傾け方が愛おしいぞ。そして広がりゆくヅカ友の輪。あとがきで作者さんの夫さんがラミン・カリムルー⇒中川晃教の順で落ちてゆくのが親近感ありまくる。2016年12月13日、同じ会場にいたのだろう。
(2017/2/11)


いつか緑の花束に 吉野朔実(小学館/2016年12月)
セレス 私の最も 美しい星(P52)
「MOTHER」、MOTHER続編ネーム、「劇団ソラリス」ネーム:MOTHERの一作のみだと、不穏を孕んだ箱庭的世界という感じだったけれど、続編でアリアにぐっと惹きこまれる。ソラリスのほうで繰り返される「あなたには3つの選択肢があります」、指揮者(コンダクター)と呼ばれる存在による裁き、道理だけで情を廃しているからこその「正しさ」はディストピアにつきものかもしれないけど、虐待を受けてきた女性に対する判決は現実よりもよほど救いがある気がしてしまう。ただ「数が合いません」以降は、やっぱり「ええー……」となってしまうけれども。
Joker、蝙蝠の慶福:蝙蝠の慶福は flowers掲載時(2004年2月号)に読んだ覚えがある。ツートーン・ショートコミックではこの2作がよかった。それぞれ毒々しい、かわいらしい童話風。
いつか緑の花束に:吉野朔実の訃報を知って、ちょうど発売中だった flowers2016年6月号を買って読んだ。「ぼく 静かな女の子好きなんだ」(P228)というモブと、都度「注意する」「叱る」というかたちでちょっかい出してきていた店長の、花を「まっとうな人間あつかいしていない」感がリアルである。
(2017/2/11)


私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?  森博嗣(講談社タイガ/2017年2月)
「それにしても、この羊攻撃は、なんか、ほのぼのとしているね」(P205)
Wシリーズ5作目。本シリーズの感想を検索していて、これが「過渡期」を描いている点があたらしい、というものを読んだ。たしかに、人間との区別がむずかしくなっていくアンドロイド的存在、脳に埋め込まれたチップにハッキングすることで個人を操る、といった内容は、すでに既存の作品で描かれている(とはいってもいわゆる「電脳へのハッキング」って点では、自分は『攻殻機動隊』しか例示できないのだけど)(『攻殻機動隊』は森博嗣にとっても自覚的な先行作品であろうし)。そういった作品では、それらの存在・技術などがすでに当然のものとなっているが、Wシリーズでは、いま、まさに世界がそうなっていく過程を描いているという、的確な評だった。なるほどなるほどと思いつつ、今作の自分の感想は、羊攻撃につきます。ほのぼのとしています。百年シリーズ最終作『赤目姫の潮解』を、前2作にひきつづきスズキユカがコミカライズする(している)とのことですが、Wシリーズもどうですかね。羊攻撃。
(2017/2/26 or27)



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