2017年3月の見たもの読んだもの |
大奥〔14〕 よしながふみ(白泉社/2017年3月) 人は 悲しいにせよ 楽しいにせよ 己の来し方を ひとつの物語に編んだ時 どこか心が安らぐものでございます(P155) 正弘……! と涙がこらえきれない。うわーん正弘〜〜。そうだよふたりでカステラをつくったね……「嫌な事」から守るために大奥を用意してくれたよね……ってもう泣くしかない。しかめっつらがかわいい十三代将軍家定と正弘、それから「まるで俺が口うるさいじいやみたいじゃないかよ!!」(P56)な瀧山、この3人の主従関係はとてもとても愛おしい。瀧山が胤篤をつるっと「部外者」(P116)呼ばわりしてしまうあたり、いかにもそういう意識なんだろうなと。その胤篤は、ちょっといまいち心をどこにおいているのかつかみづらかったけれど、家定との仲は良好なのでほっとしました。でもこれなあ〜子どもは生まれないよなあ〜と思うとまたつらい、つらいのだ……。でもここらで史実外のできごととして、じつは子どもがちゃんと生まれてちゃんと育って……としてくれてもいいのよ……。いやそしたらその子の身の振りをどう物語におさめればいいのか見当もつかんのだけど。 なお、Amazonでの表記を確認するかぎり、13巻まで「ジェッツコミックス」(2巻までは JETS COMICS表記)だったのが、今巻は「ヤングアニマルコミックス」になっている。 (2017/3/1) 桐生先生は恋愛がわからない。〔1〕〜〔4〕 小野ハルカ(小学館/2016年6月、9月、2017年2月) ーーーこれは たぶん、 / ”恋愛感情”じゃない。 / でも、 / 一種の”愛おしさ”には違いない。(第2巻P56) タイトル通りに「恋愛がわからない」漫画家の桐生ふたば(32歳)が、ふたりの男性から恋愛アプローチを受ける。よく読むTwitterアカウントでお勧めされていたので電子版で既刊4巻を購入して一気読み、これはたしかにおもしろい! どうしたってこういう導入だと、ふたばが恋愛に「目覚める」、そして「成長する」という、恋愛至上主義に回収されてしまいそうななかで、真っ向からふたばのセクシュアリティに言及しつつ、その立場からの視点で描きつづける、というのはほんとに、おおこういう作品が出てきたのか、という感慨を抱かせる。「恋愛感情がわからないって、ほんとうに好きな人ができれば自然とわかるよ〜」っていうのが、おそらくふたばが感じつづけていた圧倒的マジョリティからの「暴力」だと思うが、これは「そうはいっても、ふたばだって物語が進んでいくにつれて『恋愛を知る』のでは?」という読者の予想・期待とも重なってくる。まあじっさいアサシン君や軍師の恋愛に根ざした反応には、そりゃもうにやにやしちゃうんですけど。かわいいよふたりとも……。で、そういう娯楽としての恋愛描写も用意しつつ、あくまでもふたばが「アセクシャル寄りのクエスチョニング」であることは崩すことなく、ハイなノリで、かつ説教くさくなく話を進めているのはほんとうにすばらしい。おなじようなこと2回言ってますけど、うまくまとめられなかったんだ。 ところで、ここまで明確にアセクシャル・ノンセクシャルという可能性を作中で出しているのも関わらず、自分が利用した電子書店のレビューに(何巻まで読んだうえでの感想か分からないのだけど)「ここまで理詰めで恋愛を理解しようとする女性ってめずらしい」「恋愛音痴」「恋愛スキルが低いヒロイン」「こじらせ」「どっちとくっつく?」的な内容が……ならんで、おりまして……。第4巻でふたばが作品を描くうえで絶望しそうになったのが、つまりそういう……。 (2017/3/2) 鬼滅の刃〔5〕 吾峠呼世晴(集英社/2017年3月) 修行し直せ戯け者!!(P69) ぎっゆうさーん! カバー表紙単独義勇さーん! そして本体表紙(カバー下)のなんともいえない表情。 今巻でセンターカラーがぐっと増えている。起爆剤はたぶん4巻収録時の善逸。しかしその4巻からの那多蜘蛛山篇はまずはなにをおいても村田さんの登場と奮闘と全裸、そして登場即単独表紙絵を飾ったにも関わらずあんな退場になった尾崎さん(今巻のおまけで名前判明)、義勇さん再登場としのぶさん本格登場、など、いろいろ盛りあがっていますよ。もうちょっと続くけど。巻タイトルにもなっている第43話「地獄へ」、これは泣く。いってしまえば「悪辣に思えた敵のとてもかわいそうな過去」回なのだけど、泣くよ。 炭治郎の日輪刀が折れた第37話直後のおまけページで鋼鐵塚さん(37歳)はずるいだろ……。ちょうど本誌の展開とあわせてこんなところに笑いどころをもってくるなんて。中高一貫!!キメツ学園物語は、公式スピンオフとかしてくれないですかね。響凱先生は……現国教師ではないのか……。あ、現国教師になりたかった音楽教師……? (2017/3/3) ハイキュー!!〔25〕 古館春一(集英社/2017年3月) 二口がああなのはお前のせいじゃないよ / 二口は最初からああだったよ(P142) 二口史上もっともさわやかで澄んだ目での発言に悲しい真顔の茂庭要元主将。伊達工業……好き……。 「どうすれば強くなれますか?」に対する解が「意味のある練習をする」である、この圧倒的正しさよ。ハイキューはほんとうに、監督・コーチら大人勢がきちんとしていることも含めて、すばらしい部活スポーツ漫画。宮城県予選までは、「6人で強いほうが強いby岩ちゃん」を体現していくような、集団の強さで這い上がってきた烏野が、全国大会にむけて個人のレベルアップもはかってゆく。そのレベルアップした個人が集まって、さらに「6人で強く」なる。おもしろくないはずがない! 強化合宿では他校との試合じゃない関わりのなかで、各キャラクターがそのキャラクターらしい動きをする、のを読むだけでたいへんおもしろい。日向と黄金川はいかにもくったくなく意気投合しそうだし、国見はいろいろめんどうくさがりそうだし。作中で再三言及される日向のコミュニケーション能力の高さが今回も遺憾なく発揮される流れでした。いちばんの武器って身体能力よりむしろこっちなんじゃないのかね。 おまけの嘘映画予告ポスター+小話がまいどまいど最高なので、これだけ集めてカラー収録した単行本を出してほしい。 (2017/3/3) ワールドトリガー〔18〕 葦原大介(集英社/2017年3月) 4人編成が売りのウチがいきなり一人落ちたら / もうただ隠岐が女子にモテるだけの部隊(チーム)やで(P38) 生駒隊の隊服上着が赤基調であることが判明。が、ファンアートで見かけた、戦隊ものよろしく隊長のイコさんがレッド、ほかの隊員はそれぞれのカラーを着ているという案も捨てがたい。裏表紙見返しカバーは王子なので生駒隊のその他隊員カラー違いへの可能性は残っている……。(追記:と思ったのだけど、カバー下の本体表紙・裏表紙で全員おなじトーンなのでおそろいみたいだ) 王子隊の隊服は白黒でみるより学ラン感がある。 内容は、三つ巴の集団戦がおもしろいです。自分は葦原大介の作品が大好きなのに、「へえ、読んでみようかな」と思わせる訴求力のある感想がまったく書けぬ。とにかく集団戦おもしろいし、後半のヒュースVS隊員の5本勝負でパワーバランスが明確にされかつそこに「ああ、笹森なら一矢報いるよね」っていう納得感もある。あと太刀川がでたらめに強いのもあらためてわかる、からこそガトリン手強かったよねってなる。すばらしい。あと何度見ても、王子⇒修の落としかたが怖い、むっちゃ怖い。なんでスコーピオン一閃じゃないんだ。アステロイド撃ちこまれてんのにド正面から首をわしづかみ、からのスコーピオン串刺しって、3コマも使っててほんと怖い。で、ここは王子と修の実力差描写になっていて、あとのほうで王子は水上に対してバックワーム奇襲ですぱっと斬首(1コマ)してる(そのまえにヒュっていう軌道を描いた1コマはあるんだけど)。つまり王子には真っ正面から修相手に3コマ使う余裕があるということ、修は王子のこのスリーアクションに対応できないこと、がよくわかる。だからって怖い。あいかわらずジャクソンだのミューラーだのおもしろいこといいやがってこのやろう。ラストでお披露目になったヒュースの隊服は、修よりも隊長っぽい。修には「隊長ショルダー」がついてるけど、ヒュースには勲章みたいなのついてる。えらそう。おうちに帰りたいくせに。そう、第2回人気投票結果発表のひとことコメント、1位〜4位はともかく5位〜10位は風間さん以外なんかひどい。ヒュースの「おうちに帰りたい」は事実として、荒船さんの「犬から尻をガード」はひどい。かっこいいシーンなのに。荒船さんの心情はそりゃ「ぎゃー!犬!来るな!」だったんだろうけど。11位〜15位に至っては、二宮の「ゆきだるマシーン」がいいたいだけだろう……! 今回も複数投票ありと単数投票で結果分けて出しているところに、葦原大介感を感じるんだ。 (2017/3/3) |
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